キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り、伊織が手首につけた腕時計を上品なしぐさでチェックした。
伊織は誕生日に親に買ってもらったというブランドものの腕時計をいつもつけていて、光が反射してきらきらと光る文字盤を、廉達に自慢してくる。
自慢ばかりする子は嫌われるのに。
今日も、伊織の左手首がきらりと光った。
伊織が腕時計を買ってもらったばかりのときは、伊織がそれを光らせるたびに律儀にほめていたものだが、今はもう面倒になって無言でやり過ごすことにしている。
「もう時間かー」
伊織がそう言って、机を離れていった。
廉も教室の前に掛かっている時計を見ると、八時十五分。
朝のホームルームのはじまる時間だ。


