「ごめん。私、帰るね」
春穂が席を立った。
「え、ちょっと!」
伊織が呼び止めても春穂は足を止めない。
二つ結びの後ろ姿が、自動ドアの向こうに去って行った。
残された春穂のリンゴジュースはまだ半分以上残っている。
いつもなら喋りながら飲んで、すぐなくなってしまっているはずなのに。
ストローの先に、春穂の歯型が残されていた。
伊織も夕菜も、もう帰り支度をはじめている。
こんなことをしているときではないと思うのに、思うからこそ、廉は自身のコップにもなみなみと残っている炭酸を一気に飲み干した。
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