「。。。辛いのはお前だろ?」


「え?私?なんで??私辛くないよ?
早瀬冬馬に付きまとわれても。。意外と平気!
。。。
でも、早瀬冬馬が悲しそうな目をしてるのは悲しい。。。」


「はぁ。。。。なんでお前、俺につきまとった?」


「え?」


「俺に一目惚れだとか、好きだからとか。。そんな可愛らしい理由じゃねぇだろ?」


「それは。。。」

確かに。。。むしろその逆。。
私が近づいたのは。。

。。。。。



最後に3人で東京タワーに行った帰り道に、
父は交通事故にあって死んだ。

急な出来事だった。

東京タワーを楽しんで、
いろんな話をしながら、
3人で手をつないで家まで
ゆっくりと歩いていた時、
目の前をお母さんと一緒に歩く
私と同い年ぐらいの男の子も
楽しそうに歩いていた。

この道はとっても幸せな道なんだ。
この道から幸せがずっと続いてくんだって
思って本当に幸せな時間だった。

だけど、急に目の前の男の子が、
転んで道路に倒れこみ、
父は男の子を助けに道路に出て行ったのだ。

私の繋いだ手を振りほどいて。。。

父は男の子を助けた。。


当たり前だ。。


端から見たら、父はヒーローだ。

でも。。

私には。。当時父を奪った男の子がどうしても許せなかった。


もちろん中学生になってからは、
恨んだりはしていなかった。
そんな時、高校で早瀬冬馬を見つけた。

パッと見てあの時の男の子だってすぐにわかった。

顔を見た瞬間。。恨みとは違うけど、私よりも立派じゃなきゃ許せないって思ったのだ。


父の命と私の悲しい記憶と引き換えに、
あなたの命があるのだからと。。。

でも。。

早瀬冬馬は悪い人ではない。
私よりも自分の生かされている命をきっと大切にしてきたのだと思う。

だから。。それがわかったからそれでいいのに。。でも彼は悲しい目をしている。。

それは。。

悲しいこと。。。

私にとっても、父にとっても。。

あなたが笑顔じゃなきゃ、
父は何を守ったの?