動きだす自転車。
途端に、心地よい風が髪を撫でていく。
「わー!きもちーい」
さっきまであんなに怖かったはずなのに、あっという間にそんな恐怖心はどこかに飛んで行ったようで、思わず歓声を上げてしまう。
「ふふっ、楽しいー!
自転車の荷台ってこんなに気持ちいいんだ!」
「だろ?
花、喜ぶだろうなって思ってた」
「すっごく楽しいよ、蓮っ」
笑顔で声を弾ませてそう答えると、蓮の肩の力がフッと抜けたのが分かった。
「やっと嬉しそうな声聞けたな」
「え……?」
思わぬ言葉に笑みが消え、鼓動が揺れる。
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