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丘の上、横たわった大木に座る私は、懐中時計を握りしめた。
シノくんが教えてくれた蓮の秘密が、今もまだ身体中で燻っている。
そして私は蓮の残り時間を知っている。
蓮、来てくれるかな……。
来てくれたら、私は蓮に、ちゃんと想っていること全部伝えられるかな……。
一秒一秒が重なるごとに、不安な気持ちが心の中で膨らんでくる。
ぎゅうっと胸の前で手を握りしめ、うつむいていたそのとき、
サクッ…
草を踏み分ける音が耳に届いた。
それとともに、
「花」
私の名前を呼ぶ、あの低くて透明な声。
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