蓮がいた世界の私も、こんなふうに名前を呼んでもらってたのかな。



名前を呼ぶのも、呼ばれるのもなんだかくすぐったくて。



「おい、ニヤニヤしてんじゃねーよ」



「えっ、ニヤニヤしてた?」



「してた」



うそ、完全に無意識だ。

恥ずかしいーっ!



ニヤニヤとだらしなく頰を緩めている自分の顔を想像し、ひとりでアワアワしていると、蓮がぽすっと私の頭の上に手を置いた。



「ほら帰んぞ。
家の近くまで送るから」



家まで、じゃなくて、家の近くまでに変わった。



蓮、私の意思を汲み取ってくれたんだ。



「うん!」



スタスタと歩きだす蓮の後を、追いかける。



その足取りは自然と軽くなっちゃって。



蓮への警戒心が、心の中でじわじわと溶けていくのが分かるようだった。








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