俺がそんなことを思っているとはつゆ知らず、おぼつかない手つきで、血がついてるところをティッシュでこする花。
だけど、何度かこすったあたりで、首をかしげた。
『あ、あれ……?
傷がない?』
『当たり前だろ。
これ、全部返り血。
俺怪我してねぇし』
『え……?』
『お節介』
そこでやっと、花が顔を上げた。
改めて間近で見ると、すごく整った顔をしていることに気づいた。
白い肌に、淡い桃色の頰。
すっと通った鼻筋、血色のいい唇。
化粧っ気なんて、まったくない。
儚さと透明感を持ち合わせていて。
そしてなによりも、1ミリの汚れの色も見せない黒目がちな瞳が、宝石のようにキラキラと瞬いていて、綺麗だと思ってしまった。


