「とにかく、命令だから」
「でも私、……っ………」
食い下がろうとしたその続きを、私は発することができなかった。
唇が、動くことを制されていた。
……蓮が私の口を塞いでいたから。
そして次の瞬間、私に理解する間も与えず、蓮が押し付けるようにその手の甲にキスをした。
一瞬、瞳と瞳がかち合う。
いつもより熱を帯びた蓮の瞳の奥に、目を見開き驚く私の顔が映って見えた。
次に、混乱しきっていた意識の焦点が合ったたのは、蓮が私の口から手を離したときで。
「……っ」
い、今……
「うっせぇ口。
最後にキスのひとつやふたつ奪ってやろうと思ったけど、気が削がれた」
そして、表情のない声で蓮は続けた。
「とにかく、もうこの観覧車降りたら、俺たちは普通の友達に戻るから」
─── あぁ、今になってようやく分かった。
蓮の言いなりが、嫌じゃなかった理由。
私、蓮の命令に傷つけられたことなんて、一度としてなかったんだ……。


