数十秒くらい通話をしていたかと思うと、スマホをポケットにしまいながら、こちらを振り返った。
「ダチに教科書貸すの忘れてたから、ちょっと学校行ってくる」
「え?」
「すぐ戻ってくるから、ここにいろよ。
いいか、動くんじゃねぇからな?」
勝手に話をつけて、学校へと今来た道を駆けだす向坂くん。
「え、ま、待って……!」
呼び止める声が、届くはずもなく。
歩道のど真ん中、ひとり立ち尽くす私。
も、もう……!
さっきから強引なことばっかり。
結局、一緒に帰ろうって誘った理由を聞き出せないまま。
待ってろ、って何分くらい待ってればいいの?
はぁ……と溜め息を吐き出した。
向坂くんに振り回されっぱなしだ。


