ニマニマと笑みを隠しきれないままバレッタを撫でていると、

「そろそろ俺帰るわ」

蓮が別れを切り出した。



腕時計に視線を落とせば、もう7時。


私ってば、蓮のこと長く引き止めちゃった。



「うんっ」



「家に入るまでここで見ててやるから、早く家に入れよ」



「ありがとう、じゃあそうするね!」



蓮に手を振り踵を返し、家に向かって庭をルンルンと軽い足取りで歩き出すと。



「花、」



不意に名前を呼ばれ、私は声に引っ張られるようにして立ち止まり、振り返った。



「ん?」



見れば、庭の入り口に立った蓮が私を見つめていて。



と、目が合った瞬間、その瞳が細められ、微笑みを乗せた唇が開いた。



「花、誕生日おめでとう。
産まれてきてくれてありがとな」