恐る恐る顔を上げた私の顔は多分、それを見つけた瞬間絶望の色に染まっていたと思う。



だって……



「へー、ずいぶんお熱いラブレターだな」



嘲笑を浮かべる向坂くんの手には、ヒラヒラと風になびく一枚の紙があったのだから。



「な、なんでそれを!?」



私が初恋の相手───コウくんに書いたラブレターを、なんでこの人が持ってるの!?



「未来で花が落としたのを拾ったからに決まってんだろ。
俺がいた世界で花は、このラブレターを鞄の中にしまってたんだよ」



今、このラブレターは私の机の中に眠っている。


住所を知らないラブレターは、彼に届けることもできなくて。



だから今、向坂くんが私のラブレターを手に入れることは不可能。



……ということは、やっぱり向坂くんの言ってることは本当なの?



でも、今はそんなことを悠長に考えている時間なんてない。



「か、返して……!」



今はこのラブレターを取り返す方が先決。



私の思いが詰まった、大切なものなんだから……。