坂を下りたところにあるベンチに座り、蓮を待つ。
蓮にこの前のことを聞かれたら、すべてを話そう。
そう決心しながら。
蓮をあんなふうに傷つけてしまった以上、なかったことになんてできない。
だれかに話すのは初めてだから、とても勇気がいるけど……。
でも、蓮だから。
蓮だから、大丈夫。
蓮の顔が浮かんで、またなぜか涙腺が緩みそうになって、手の中にあったケータイをぎゅっと握りしめたとき。
「花」
そう呼ぶ声が聞こえて、私は顔を上げた。
「蓮……っ」
蓮が、目の前に立っている。
来てくれたことと蓮の名前を呼べたことに安堵しながらも、私はあることに気づき、浮かせていた腰を止めた。
あれ?
なんか、蓮……怒ってる?
そう思ったのも束の間、おでこに怒りマークをつけたまま、ずんずんと蓮がこちらに歩いてきたと思ったら、直後コツンッとげんこつが降ってきた。
その反動で再びベンチに座りこむ。


