「ねぇ、あのね」
「うん、なに?」
「……んーん、やっぱりいい。」
「本当に?」
「うん」

そう言って、君は僕の大好きな笑顔を見せた。

誤魔化す時の君は、必ず笑顔を浮かべる。
だからね、知ってるんだよ。

君が何かを隠してる事なんて、ずっと前から気付いてるんだよ。

だけど、僕は弱いから。


その笑顔の奥に、何があるのか知りけど、聞いてしまえば君が壊れてしまいそうで聞けないんだ。


ごめんね、ごめんね。


もっと早くに君に聞いていれば、君は苦しまずに済んだのかな?


もっと早くに君と向き合っていれば、君は悲しまずに済んだのかな?


もっと早くに君の涙に気付いていれば、君は泣かずに済んだのかな?


わからない、分からないよ。


族の総長として、君に冷たく当たったこともあったよね。


だけど、君は優しく包み込んでくれたよね。


「無理しないで。私は姫の座なんていらない」って。


ねぇ、知ってる?君のその言葉がどれほど僕を救ったか。


ねぇ、知ってる?君の存在がどれほど僕を突き動かしたか。


ねぇ、知ってる?僕はね、君のためならなんだってできるんだ。


君が僕に言ったように、僕だって君のためならなんだってできるんだよ。