どこかで聞いたことのある名前…

パピヨン…確かあれはラブホテルで水橋さんと会った時、水橋さんが俺に話してくれた…

水橋さんのお母さんは伝説のレズビアンで、その業界ではパピヨンと呼ばれている。

完全に思い出した俺は水橋さんに聞いてみることにした

「水橋さん!!パピヨン様って水橋さんのお母さんの名前だよね!?」

「そうよ。パピヨンは私のお母さんの名前…そこに行けば…お母さんに会える…」

まるで自分に言い聞かせるようにして水橋さんはそう答えた

「今日はもう遅い。月見くんの親も心配しているだろうし、帰ったほうがいいんじゃないか?」

大杉の父親が自分の腕時計を指差しながら、俺に言った

確かに親も心配しているだろう…実際、俺はスタンガンで気絶したりしていたわけで…

「そうですね。あっ、でも、警察に話しを聞かれたりしないんですか?」

「あぁそれなら大丈夫だ。私が全て話しておくよ。」

「ありがとうございます。それじゃ…水橋さん、大杉、また学校でな。」

俺は軽く手を振りながら小走りにその場を後にした

家に帰ると、案の定、母親に帰りが遅いと怒られた…

今日はまさに地獄のような日なわけで…

冷めた飯を食べながら母親の説教を聞き、今日という日を思い返す

姉貴に胸で跳ね返されて後頭部を打って死にそうになった

ヤクザに殺されそうになった

水橋さんに告白するチャンスを逃した

最悪だ…いや、でも一つだけ良いことがあった

水橋さんが

覚えてくれていた

初めて呼んでくれた

俺の名前

少しでも縮まったのかな…

俺と水橋さんの距離…