「組織としてはその方が好都合だったとしても、俺はそれを望んでなどいない。お前に苦労かけた分、将来くらいは自分の選んだ女性と一緒になって欲しいと俺もお前の父さんもずっと願ってたからな。勘違いしているようだから言っておくが、お前の父さんはお前をちゃんと想ってる。」
「ですが俺は華月に足を踏み入れる事さえ許されません。それでも思っているなどと言うんですか」
「お前に見せる顔が無かったのだ。如月にお前が来る事になった事を誰よりもアイツは悔やんでいた。いつも誰よりもお前を心配しているよ…アイツはそんな不器用な奴なんだ」
今まで知らずに生きてきた事実に、ずっと悩み続けて来た事実に、キョウヤは目を細めながら唇を噛み締める。
「婚約の件はこのお嬢さんが天野組の印を押した書類を手に入れ、好都合とばかりに私が倒れたうちに華月にそれを送ったみたいだな。華月は表舞台の人間だ、裏世界の汚い手を使って華月の幹部でも買収して婚約話を勝手に進めたんだろう。その華月の幹部もじきに判明する」
天野みちるを見下ろし見つめるその視線は怒っているなんてモノじゃない。
目を離したら殺してしまいそうな程鋭い瞳。
「そのお嬢さんを片付けてくれ」組長はそう言って手をヒラリと部下の人達に仰いで見せると、すぐさま数人のスーツを着た人達が連れて行ってしまった。
「キョウヤ、如月も華月もお前を大切な家族だと思ってる。もちろんこれから先もずっとだ……だからお前は、愛した女をもう二度と手放すな」
「………っ…」
「こんな選択をさせてしまった事、申し訳なく思ってる。でも…お前は若頭としてだけじゃない。自分の幸せも考えて良いんだ」
目尻を下げ、キョウヤの肩にポンっと優しく手を置くと
「ほら、あの子はお前を待ってる」
……そのまま背を向け、如月組と書かれた大きな扉の中へと入って行った。



