無理矢理護衛を振りほどき私の元へ走って来ると、バンッと背中の真ん中を一度強く押す。
「しっかりしろ!馬鹿が!!」
やっぱりこうやって大変な時、いつもケイゴが私の背中を押す。
いつもいつも迷惑かけてごめんね…面倒事にばっかり付き合わせてごめんね…
ケイゴは俺達が必ずキョウヤの所へ届けてくれると言った。それなのに私が先に諦めちゃダメだ。
「うん!!!」
私はもう一度よろけた身体を立ち上がらせると、キョウヤの背中を追いかける。
諦めるな、諦めるな!
別れを言われたからなんだ。
私が唯一好きになった男でしょ。そんな簡単に手放しちゃだめだ!!信じなきゃダメだ!!
「キョウヤ!!」
その声はきっと、人生で一番大きく響くそんな声だったと思う。
キョウヤの名前を呼んですぐ、
いきなり辺り一面がシンっとする。
それに合わせるようにして
「どうした、何事だ」
そんな大きな声でもないのにこの場を一瞬にして静かにさせた低音ボイス。
「頭…」
後ろからはそんなチヒロさんの言葉が聞こえる。
頭…?
ってことは如月組の組長…
「キョウヤ、これはどういう事だ」
綺麗に整えられた髪に藍色の着物。
瞳はどちらかというとタレ目でどこか独特の色っぽさを醸し出している。
「申し訳ありません、何でもありません」
キョウヤはその人に一礼すると、すぐさまそんな事を答えた。