キョウヤは私の頬につたう涙をポンポンっと優しくふくとその手を離し





「ごめんな」





ともう一度謝った。





「もう良いよ…怒ってない」




鼻をすすりながらキョウヤを見上げると、そのグレーの瞳は儚げに私を見つめる。






「違うんだ。ナオ」




「…違う…?」





違うって何が…?





「お前を泣かせたくなかった。そんな顔させたくなかった…お前の悲しむ顔を見たくなかった」




「………」




「でもそんなの本当は建前で…お前と離れるのが怖かった。何も言わずに離れればこのままずっとお前と繋がっていられるような気がしたんだ。そんなズルいことばかり考えて。中途半端な事をしてお前を傷付けた」






キョウヤ…何を言ってるの…?





「決別をしたら、今までの事が全部無かったことになっちまうんじゃねェかって。お前が一生俺を忘れなきゃ良いのになんて馬鹿なことまで考えて」





ちょっと待って…訳がわからない…





「悪い」




どうして謝るの…もう怒ってないよ。私は怒ってないのに…





「……っ……」






「…………」








「俺はもう、お前の側にはいられない。隣で守ってやる事も出来ない」








「……え…」






微かに出たのはそんな掠れた情けない声。












「ナオ…」






「…………」














「別れよう」












その瞬間、




まるで呼吸が止まったような…そんな気がした……