ケイゴは後ろで未だ何か言っているお母様を無視すると、ズカズカと廊下を歩き一枚の襖の前で足を止めた。
「親父、入るぞ」
それは先ほどまでとは違い、ワントーン落とされた低い声。
それに返すようにして中からは「あぁ」とだけ短く返事が帰ってきた。
何故か緊張するのはなんでだろう。
ケイゴのお父さんがヤクザの幹部だと聞いたから?
いや、違う。
この中に入ってキョウヤの事を聞くのが怖いんだ…。
ケイゴは松の書かれた襖をゆっくり開けると、わたしの手を引いて中へと入る。
「何だ。随分早い帰宅だな、仕事はちゃんと終わったのか」
白髪混じりの黒髪に、つり上がった瞳。
少しガッチリとした体型に独特のオーラ。
ケイゴとは似ていない…そう思った。
「仕事も何も今の状態じゃやる事ねェよ」
「そうか、それもそうだな」
座敷に座りながら話していた顔を持ち上げ、こちらを向いたケイゴのお父様とふいに視線がぶつかる。
「そちらのお嬢さんは?」
つり上がった瞳を少し下げ、ケイゴに聞くその様は優しげで
「キョウの事を聞きに来た」
お父様の質問には返さずそう答えたケイゴに、ピクリと肩を揺らした。
そのケイゴの言葉で、きっとお父様は私が誰か分かったんだろう。
「聞きたい事とは?」
さっきの優しげな表情を消し真剣な眼差しで私とケイゴを見据える。



