佐伯が学校に来なくなってから1ヶ月が経つと、彼がいない日々に慣れ始めて、彼のことを考えなくなってた。
人間の記憶って、残酷だよね...
そんなある日、終了式の日のこと。
「そーいや佐伯のヤツ、後輩に暴力振って停学になってそのまま転校したらしいばい。蹴り飛ばしたんだと。
アイツ、前にも寮でケータイをベッドの下に隠し持ってたり、夜に寮から抜け出してコンビニに行ったりして厳重注意受けてたらしいもんな」
「マジ?ハハハ」
優越感陶酔男子たちがバカにした声音でしゃべってるのを耳にしてしまった。
ウソだ。ウソであって欲しい。
佐伯が暴力だなんて、信じたくない。
事実かどうかなんて分からないじゃないか。
バカにしたような言い方。
下品で耳障りな笑い声。
ムカッ腹が立って来る。
よく悠々と他人のこと嘲笑ってられるよ。
自分たちだって、この間停学になっても
おかしくないようなことやって、呼び出し食らってくせにさ!
それも、佐伯より悪質なことをやってね。
佐伯は停学になってこいつらはならない
なんて、絶対おかしい!不公平だ。
裏工作でも行われてるんじゃないの?
佐伯が暴力を振って停学になったのが事実だとしても、私が彼に恋したことも事実であることに変わりない。