心の傷など気にしてるヒマはなかった

生き延びることに必死だったんだ


俺の弟は優しい

繊細で

つい守ってやらねばと思った


弟は

体に傷がつかない代わりとでもいうように

自分のトラウマに苦しめられるようになった


俺は知っている

自分で痛みを忘れる術を

俺は知っている

自分の手で大切なものを守る方法を


すべて弟のためだったのに

俺のしてきたことは弟を苦しめてしまい

最後は決別することになった


それでも俺は生きなければならない

弟を失っても

もう後戻りはできないのだから

帰る場所などないのだから