「ねえ、ミンジーは誰が好きなの?」

「ジョッシュ。」

「え!いつから?」

「去年の今頃くらいから。」

「そっか…。言ってくれればよかったのに…。」

「んーなんかね。言えなかったんだよね。言っちゃったら、ジョッシュと友達でいられなくなりそうな気がして。」

「そんなことないと思うけど。気持ち、伝えないの?」

「告白して、フラれるくらいなら友達のままがいいな。」

「まだ決まった訳じゃないよ。」

「奏美、知らないの?ジョッシュは前学期から来ている、ドイツの女の子に夢中なの。」

「クラリネットのジャスミン?」

「そう。」

「ミンジー…。」

彼女は俯いていた。

「ずっと友達でいたいけど、こんなの辛すぎだよ…。」

「やっぱり、気持ちを伝えようよ?」

「こんな惨めな私に追い討ちかける気なの?」

「そういう訳じゃないけど…。」

「言わないって決めたの。胸の奥にしまっておくの。」

「ミンジー、じゃあ、さっきのは何だったの?好きな人と一緒にいたいんじゃなかったの?」

「そうだけど…。」

「良いこと考えた!手紙を書こうよ!」

「はぁー?今どき手紙?」

「今どきだからいいんじゃない!」

「んー、なんて書くの?」

「そうねー。こんな感じは?」

ージョッシュ、突然のお手紙をお許し下さい。最近のあなたを見ていると、私は胸が締め付けられる想いです。私は、いつからかあなたを好きになってしまい、今も一人で想い続けています。あなたも同じ気持ちだったら、どんなに素敵なことかー。
私はずっとあなたの友達でした。そして、これからもそうあり続けるでしょう。 ミンジーより

「ダメダメ!こんな文章、私が書いたんじゃないって一発でわかるじゃんー!」

「じゃあ、どうするの?」

「そうだね…。」

ージョッシュ、最近ジャスミンととても仲が良いのね。実は、私、少しヤキモチやいちゃってね。だって、あなたが好きだから…。
友達だけどー、もう友達じゃいられないの。私たち、付き合うことはできないかな? ミンジーより

「随分と積極的というか、挑戦的というかー。」

「それなら、混ぜてみるのは?」

ージョッシュ、最近のあなたを見ていると、私はヤキモチをやいてしまいます。
私はあなたを好きになってしまい、もう友達でいることが辛くなってしまいました。あなたも同じ気持ちだったら、どんなに良いでしょうー。もし、よければ、あなたの気持ちを聞かせて下さい。 ミンジーより

「良いじゃん!奏美、天才ー!」

「へへへ!」

「問題はどうやって渡すかだね。」

「そうだ、ジョッシュがレッスンを受けている間に、コントラバスのケースに入れておいたらどうかな?」

「いいかも!」

「決行は明日!今日、家に帰ったら、清書するね!」


翌日、数学の授業中に彼女は抜け出して、ジョッシュの楽器ケースに手紙を入れてきた。

「はぁー!ドキドキ!」

「どんな返事が来るかな?」

「キンチョーするー!」

その日、ミンジーがジョッシュに会うことはなかった。

「奏美、私、もうダメ…。絶対フラれたんだよ…。」

「何を言ってるの!まだ1日しか経ってないでしょう。」

「でも…。」

「ほら、レッスン始まるでしょう?行かなきゃ!」

「はぁーい…。」

レッスンから帰ってきた彼女は真っ赤になっていた。

「返事きたの?」

「来た!練習室の扉に挟んであった!」

「開けてみた?」

「まだ!」

「読んでみて!」

ーミンジー、手紙をありがとう。ちょっと、混乱しちゃってさ、どう言ったらいいのかわからないけど…。俺はコミュニケーションが上手くとれないのかもしれないし、それに口下手かもしれないけど、自分ではミンジーにメッセージを送っていたつもりなんだ。
あー、もう!俺も同じ気持ちだってこと! ジョッシュより