練習が終わった後、ミンジーがニヤニヤしながら近づいてきた。

「もうお兄ちゃんの虜?」

「そんなわけじゃないけど…。」

「お兄ちゃん、素敵でしょう?」

「そうね。」

「奏美もヴァイオリン弾くんだから、少し見てもらえば?」

「いや、私、ヴァイオリン下手だし!」

「お兄ちゃんはいい先生だよー!」

韓国系の人々は、年上の人をお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼んで慕う。

韓国人のミンジーの従兄だから、ニコラスも韓国人なんだろうけど、国籍は違いここの国の人だそうだ。

名前がニコラスだから、ハーフなんだろうか?

ミンジーの伯母さんは韓国人だし…。


午後の数学の授業は全く覚えていない。先ほどの音が頭の中を反響していた。

美しい旋律に、美しい音、彼が奏でる、素敵な音楽。

一目惚れ?

いや、一聴き惚れ?