帰国の朝ー。フライトまではまだ時間があった。

「本当に帰っちゃうの?」

「うん、残念だけど。」

「次に逢えるのは半年も先かぁ…。」

「寂しくなるよ。」

「一緒にいられる時間は短いね。」

「卒業したら、ドイツに遊びにおいで。」

「行こうかな…。」

ボランティアなど、どうでもよく感じた。

「まだ時間があるから、ご飯でも食べようか?」

「そうね。」

私たちは空港のレストランに入った。テーブルには赤と白のチェックのクロスがかけてあって、見るからに明るい雰囲気のお店。

会話はしなかった。何か言っても無意味な気がして、静かに食べ終えると、ゲートへ向かった。

「またね。」

「うん。」

「大丈夫?ちゃんと帰れる?」

「うん。」

「体に気をつけてね。」

「うん…。」

「泣かないで、また逢えるから。」

「寂しくなる…。」

「僕もだよ。でも、奏美は笑っていたほうが素敵だよ。ね?」

涙を拭って、そっと微笑んだ。

「ほら、綺麗だ。」

「もう、行かないと…。」

「うん、メールするね!」

「はい、またね。」

飛行機が無事にドイツまで飛びますように。
そう祈りながら空港を後にした。