みんなそれぞれの夢がある。一緒にいられる楽しい時間も、あと1年で終わる。本当に短い学生時代。私はこの異国の地で、何を学んだだろう。


テストはさすがに難しかった。説明がちんぷんかんぷんで、さっぱりわからない教科もあった。

「ママ、今年はダメかも。」

「難しかった?」

「うん。もう、無理。」

「何を言ってるの、アメリカに行くんでしょう?」

「もう、日本に戻って、帰国子女枠で入試しようかな。」

「それだって、簡単じゃないんだから。」

私は黙ってアイスクリームを食べる。

「そろそろ、日本語で小論文の勉強もしたほうがいいんじゃないの?」

「そうかな?」

「そうよ。何があるかわからないんだから。」

「そうだねー。」

「それより、おばあちゃんに何かお土産を差し上げたいから、明日選びに行きましょう。」

「はーい。」

帰国まであと3日。もうすぐニコラスに逢える…。



私は過去2年間、秋・冬・春しか経験していない。なぜなら、2カ月もある夏休みは、真冬の日本に帰国しているからー。


冬の成田空港はどんよりしていた。外に出て気温計を見ると11度しかない。

「あー、寒い!」

黒いトレンチコートの前を閉めて、リムジンバスが来るのを待つ。

この綺麗なアスファルトとにおいで日本にいると実感する。よく、日本の空港は醤油のにおいがする、なんて言うけれど、醤油ではない、何か立ち籠めた、独特のにおいがする。私はこのにおいが好きだ。

「ご乗車ありがとうございます。こちらはー。」

バスに乗り込む。おばあちゃんの家まであと少し…。

ウトウトしていると、目的地に着いた。そこから電車に乗り換える。

「おばあちゃん、ただいま!」