廊下に出ると、ほとんどの生徒はもうホールに入った後だった。

ここからはちょうど走ってきているジョッシュの姿がみえる。

「奏美!急がないと遅れるぞ!」

「ジョッシュこそ!」

「今日は、うちの卒業生が来てるらしいから、遅れたら怒られそー!」

「聞いた!ミンジーの従兄でしょ?」

ホールに入ると、みんなは席に着いていた。

「遅いよ!」

先生が心なしかニコニコしながら言った。

「今日はスペシャルゲストがドイツから来ているんだ。ヴァイオリンのニコラスだよ!」

「こんにちは。」

彼は控えめな笑顔でそう言った。

「さあ、練習を始めるよ!」

先生はいつもより張り切っているようだ。

私がチューニングの音を出す。
みんながチューニングをする。

ニコラスは美しかった。彼から奏でられる音の一つ一つが魅力的で、心をくすぐる。

すごく好き!私もあんな風に演奏したい…。

「奏美!遅いよ!」

あまりにも素敵だったから、自分の入るところを忘れて、先生に注意されてしまった。