『琉宇がここに来るなんて』
これ以上、優紀君の言葉を聞きたくなくて、スマホを耳から離そうとした瞬間、
「ヨーロッパから戻ったら、俺から会いに行こうと思ってたのに」
目の前のラウンジのドアが開いて、優紀君が姿を見せる。
「優紀くん?」
「会って、週刊誌の記事なんか気にしてない。俺が勝手に嫉妬してただけだって、謝ろうと思ってた」
立ち尽くす私の前で立ち止まる。
久しぶりに会った優紀君は、震えるほど綺麗で。吸い込まれるように彼を見つめた。
「ひどいこと言って、ごめん」
透き通った瞳は、泣きだしそうに揺れていて、思わず優紀君を抱きしめる。
「優紀君は全然悪くない。悪いのは、紛らわしいことをした私だよ!」
抱きしめた腕の中、優紀君が身動ぎする。
「ちゃんと俺から会いに行くべきだったのに、琉宇に嫌われるのが怖くて行けなかった。俺、最高にかっこ悪い」
私の肩に顎を置いて、弱々しく呟く優紀君。
弱気な優紀君に、愛しさが溢れる。
「かっこ悪くなんかない。優紀君はいつだって、ドキドキするくらいかっこよくて。私の最高の王子様だから」
『王子様』なんて言葉、口にするのは本当は恥ずかしいけど。
けど私にとって優紀君は、誰よりも大切な王子様。
「好きだよ」って告げようとした唇に、優紀君の熱い唇が触れる。
人目もはばからずキスをした優紀君は、
「愛してる、琉宇」
私が大好きな、透き通るような笑顔を浮かべた。


