いつの間にか、目の前の観客も、審査員も視界から消えて、



眩しいくらいに綺麗な目をした、優紀君しか見えなかった。




最後のセリフを言い終えたとき、鼓膜が破れるんじゃないかってくらいに、大きな歓声が沸き起こった。



ステージの上、優しい笑みを浮かべる優紀君に、ドキドキする。



「やっと琉宇ちゃんに辿り着いた」



大きな歓声の中でも、はっきりと聞こえる声。



大声を出したわけじゃないのに、よく通る不思議な声。



頬を撫でるような、柔らかい優紀君の声が好き。



「ずっと、この日を待ってたんだ」



一歩一歩、優紀君が私に近づく。



「俳優を辞めなくてよかった。心から、そう思うよ」



優紀君が私に向かって、手を差し出す。



吸い寄せられるみたいに、私も手を出すと、優紀君はその手をぎゅっと握った。




「結果を聞かなくても分かる。優勝は琉宇ちゃんだよ」



優紀君の手の温もりと、



私に注がれる、透き通るような綺麗な眼差しに、



嬉しくて、涙が零れた。



6年間、胸に抱えていた葛藤や。



どうせ私なんかって諦め。



そこから再び、前を向いて頑張ってきた自分。



その全部が、優紀君の言葉で許されて。



認められた気がした。




『それで良いんだよ』って。