「そう言や、琉宇と一緒だったドラマでも、同じことあったよな」
開君が、懐かしそうに遠くを見た。
「うん」
今でも、あの日の音や色。雨の匂いまで鮮明に思い出せる。
「本日はバラシです!」
突然の雨で、撮影は中止になった。
みんなが帰り支度をする中、優紀くんがいないことに気付いた。
どこに行ったんだろう?
彼の姿を探して、外に出ると、
花壇の端に座る、ずぶ濡れの優紀君の後ろ姿が見えた。
「今日の撮影、中止だって」
遠くから声をかけながら近づくと、優紀君の肩が小さく震えてた。
こんな雨の中、傘も差さないでずぶ濡れの優紀君。
「さむいの?ねぇ、風邪ひくよ」
そう言って、優紀君の前に回り込むと、彼は携帯電話を握りしめて泣いていた。


