一瞬遅れて思い出した。ふゆみのお母さんの、ちょっと変わった"趣味"を。

「そうだった。見てんのかな、お母さん」

「絶対、見てる」

「うわあ、恥ずかしいなあ」

 俺は防犯カメラに向かい、ペコッとお辞儀をした。もしお母さんが見てなかったら、バカみたいだけれども。

 そしてふゆみを愛車の助手席に乗せ、自分もそそくさと運転席に乗り込んだ。

「もしかして、お父さんも見てたりするのかな?」

「それはないと思う。父は、"はしたない"事はしない人だから」

「そうか、良かった。あ、シートベルトは分かる?」

「うん、大丈夫」

 エンジンを掛け、さあ出発、と思ったが、行き先が決まってない事に気がついた。

「どこへ行こうか? 行きたいところ、ある?」

「ん……その前に、聞きたい事があるんだけど、いい?」

「いいよ。なに?」

「今日は、どうして家に来たの?」

はあ?

 突然、ふゆみは変な事を言い出した。

「そりゃあ、ふゆみの"愛のない結婚"を阻止するためさ」

「どうして?」

「どうして、って?」

「どうして止めようと思ったの?」

「どうして、どうしてって、うるさいよ。おまえが好きだからに、決まってんだろ?」

 つい、キツく言ってしまい、ふゆみは怒るかな、と思ったのだが、

「嬉しい……」

 と言い、本当に嬉しそうに微笑んだ、のだが……