「ありがとうございます。では、桜井さんが負けた場合のペナルティですが、ん……眼鏡をコンタクトに替える、というのはどうですか?」

 と、速水が問えば、

「構いません」

 と、桜井ふゆみは即答した。どうせ俺なんかに落ちるわけないから、ペナルティなんか関係ない、という事だろう。くそっ。

「では、ただ今よりラブゲームの開始とします。みなさん、異論はありませんか?」

 速水がそう言うと、隣の上原がまたもや右手を挙げ掛けたが、それよりも一瞬早く俺は言った。

「異論なし!」と。

 上原や、他のみんなが俺を凝視するのを感じたが、俺は何食わぬ顔で椅子に座った。心で闘志を燃やしながら。

 やってやろうじゃねえか……!

「早速ですが、上原さん。桜井さんと席を代わってもらえますか?」

「へ?」

「ゲームに協力してください」

 速水に言われ、上原は渋々って感じで席を離れ、代わりに桜井ふゆみが俺の隣に移ってきた。

「よろしく」

 と俺が言ったら、

「せいぜい頑張ってみれば?」

 と、桜井ふゆみは言い、フッと笑った。黒縁の眼鏡を光らせて。