「ほら、これを使って?」

 お父さんの真似ではないが、俺もポケットからチェック柄のハンカチを出し、ふゆみの手に握らせた。

 そして、ふゆみの背中を摩るとか、頭を撫でるとか、肩を抱くとかしたかったが、親の前ではマズイと考え、我慢した。

 女性二人に泣かれ、男二人は互いに見合ってため息を吐いたが、

「では、私が続きを話しますね」

 と、お父さんは言った。

「ふゆみの実の父親は、ふゆみが幼稚園に通っていた頃、自動車の事故で亡くなりました。三浦さん、運転は……?」

「します」

 今日もしてるし。

「そうですか。気を付けてくださいね?」

「はい」

 やはりスピードは控えないとな。

「ふゆみの実の母親は、これの姉なわけですが、夫の後を追うかのように、病気で亡くなりました。ふゆみは、小学校に上がったばかりでした」

 幼くして両親を亡くしたふゆみを想ったら、俺まで泣きそうになってしまった。何とか堪えたけれども。

「私たち夫婦は、迷わずふゆみを引き取りました。当時、私たちは、結婚して間もなかったのですが、その後も子どもを授かる事はなく、ふゆみは私たち夫婦の、正真正銘の一人娘になりました」

 なるほど。だからこの二人はこんなに若く、ふゆみとあまり似てないんだな。