「その理由に、見当はついていました。貴女には、想いを寄せる人がいるのだろうと。ただし、確信は持てませんでした。貴女はとても慎重な方だから、変な言い方ですが、ちっとも尻尾を出さなかった。

 確信したのは今日です。今日の貴女は、とても分かりやすかった。三浦さんの来訪を告げられた時、貴女はひどく動揺していた。そして、その後はそわそわして、いわゆる、"心ここにあらず"だった。

 三浦さんが貴女の意中の人なのだと、私は確信しました。この部屋に来る前、私はある女性について、ちょっとした告白をしたのですが、貴女はまるで上の空だった。どんな内容か、憶えていますか?」

「えっと、それは……」

「ま、それはいいんです。話を戻すと、私は王子様の登場に、とても期待したんですよ?」

 そう言って神徳は俺を見た。"王子様"って、俺の事なのか?

「私は観客になったつもりで、王子様の活躍を見るのが楽しみだった。ところが、その王子様はまさかの敗北宣言。そして敵前逃亡ですからね、がっかりですよ」

 それで"失望"って言ったのか。それにしても、酷い言われようだな、俺。

「はっきり言いましょう。ふゆみさん、貴女の目当ては私の財力。つまり、金ですよね?」

 ……ん? 何だと!?

「黙れ! ふゆみは、そんな女じゃない!」

 俺は立ち上がるのと同時に、神徳を怒鳴りつけた。ふゆみに対する無礼千万な言い草に、猛烈な怒りを覚えたからだ。