メイドさんが去り、少し待つと、

「ところで、ふゆみの件で私達にお話があると聞きましたが、うかがっても良いですか?」

 ひどくゆっくりした調子で、ふゆみの父親が言った。俺はこのタイミングを待っていたのだが、いざとなると、どう切り出すべきかわからなかった。

 数秒考えて、田所ではないが、"ど直球"で行く事にした。

「唐突ですが、お嬢さんのふゆみさんを……私にください!」

 言った。言ってしまった。

 果たしてふゆみの両親、特に父親はどういう反応をするのだろうか。俺の事前の想定では……

『ばかもん! ふゆみには立派な婚約者がいるんだ。貴様などに娘はやらん。とっとと失せなさい!』

『嫌です。俺たちは愛し合っています。あなたは、娘さんの気持ちなんか、どうでもいいんですか? それでも親ですか?』

 は、ちょっと言い過ぎだが、そんなような攻防を予想したのだが……

 あまりに唐突だったのか、しばし両親ともポカンとし、ようやく出た反応は、

「素敵だわ……」

 という、母親のおっとりとした呟きだった。