俺はふゆみの両親について、初老で威厳と風格があり、父親の声は重く低く、高圧的と、勝手に思い込んでいた。ところが、今聞いた父親の声は若々しく、低いどころかやや高く、例えるなら、田所みたいな声だった。

 少し硬めの椅子に背筋を伸ばして座り、これまたゆっくりと座るふゆみの両親を見る。眩んでいた目もだいぶ慣れて来たようで、声と同じで父親も、そして母親も、とても若い事がわかった。

 50代には到底見えず、下手したら40代の前半に見える。よほど結婚が早かったのだろう。

「三浦さんは、新聞記者さん?」

 ふゆみの母親が、やはり若い声で聞いて来た。

「いえ、私は……」

 と言いながら、俺は反射的にジャケットの内ポケットに手を入れたが、そこに名刺入れなんてあるはずもなく、

「名刺は忘れてしまいましたが、私は出版部門でシステムを担当しています」

 と応えた。という事は、ふゆみはこの人たちに俺の事は話してない、って事でいいと思う。

「まあ。新聞社の方なのに、本をお作りになるの?」

「は、はい。すみません」

 つい謝ってしまったが、なんか調子狂うなあ。