執事さんの案内でフカフカの絨毯の上を歩き、多過ぎていくつあるかも分からない部屋の一つの前で執事さんは立ち止まり、木製のドアをコンコンとノックしてから開いた。

「お客様をお連れしました」

 執事さんに促されて部屋に入ると、まず目に入ったのは、いかにも品の良さそうな木製の家具だった。たぶんアンティークってやつだと思う。

 そして、大きめなテーブルの向こうに座っていた男性がゆっくりと立ち上がり、少し遅れて女性も立ち上がった。

 後ろに大きな窓があり、レースのカーテンが覆ってはいるが、いわゆる逆光のため目が眩み、2人の顔はよく見えない。だが、ふゆみの両親である事は間違いないと思う。

「突然お邪魔してすみません。ふゆみさんの同僚の、三浦裕一郎と申します」

 俺は噛まずに言えた事にひとまず安堵し、斜め45度で頭を下げた。そして顔を上げると、

「私はふゆみの父親で、こっちは母親です。どうぞ座ってください」

 と言われ、俺は、

「は……はい」

 と、おもいっきり噛んでしまった。なぜなら、あまりにも予想外だったから。