上原め、ノリのいい奴だな。おちゃらけた感じの上原となら、下らないゲームを笑い話で済ませられるだろう。であれば、ちょうどいいじゃないか。と俺は思ったのだが……

「すみませんが、立候補は却下します」

 速水は速攻でそう言った。

「えー、なんでですか?」

「立候補では、ゲームの難易度が低すぎてつまらないからです。相手の女子は、僕から指名させてもらいます」

 上原は途端に頬っぺたを膨らませ、拗ねたような顔をしたが、そんな彼女をよそに、みんなの視線は自ずと他の女子2人に注がれた。

 その1人は広告の相沢圭子。上原ほどではないが明るい子で、彼女が相手でも軽い冗談で済ませてくれそうに思う。そしてもう1人なのだが……

 こちらは悪いけど論外だと思う。速水と同じ総務で、経理を担当している桜井ふゆみだ。やはり速水と同じく黒縁の眼鏡を掛け、速水に負けず劣らず真面目一辺倒なイメージの女だ。

 同期仲間の間では"桜井女史"と呼ばれており、俺個人では密かに"女速水"と呼んでたりもする。ちなみに彼女とは、面と向かって話した事は一度もないと思う。

 速水は難易度がどうこう言っていたが、いくらなんでも彼女はないだろう。難易度が高過ぎる、と思ったのだが……

「桜井さんを指名します」

 そんな、嘘だろ?