もしここで訪問を断られたら、それこそ門前払いになるわけだが、

『お通りください』と言われた。よっしゃ!

「あの、駐車場はありますか?」

『中にございます』

 だよな。我ながらバカな事を聞いてしまった。としても、このでかい門扉をどうやって開けるんだろうか、と思っていたら、音も無く横にスーッとスライドしだした。

 すげえなあ。

 愛車で邸内に入って行くと、何台もの車が駐まっているのが見えた。その殆どは黒塗りの高級車なのだが、一台だけ異質な車があった。シルバーメタのジャガーだ。

 張り合うわけじゃないが、俺はそのカッコいいジャガーの隣に愛車を駐めた。俺の愛車も見劣りはしないと思うが、値段ではちょっと負けてるかな。

 車を降り、見上げれば、それは正に邸宅と呼ぶべき和風の立派な建物だった。ふゆみは毎日ここに出入りしてるわけだが、どうにもイメージ出来なかった。

 緊張しながら呼び鈴を圧すと、でかい扉が開き、白髪の老人が俺を迎えてくれた。おそらくインタフォンの人と思われ、黒の燕尾服を着ているから、これが、いや、この人が、噂でしか聞いた事のない執事さんだと思う。

「どうぞ、お入りください」

「あ、はい」

 俺、すごい所に来ちゃったんだな。