「期間はどうしましょうかね。3ヶ月ぐらいが妥当でしょうか。とすると……来年の1月の同期会が期限という事になります」

 俺の抗議など、まったく意に介さず速水は続けた。

「おい、ちょっと待ってくれよ。俺はそんなのは……」

「もし落とせなかった時のペナルティですが、丸坊主っていうのはどうですか? 髪質が良さそうな頭を、丸坊主にするって、三浦君にはかなり厳しいペナルティだと思います」

 "そんなのはごめんだ"と言おうとした俺に被せ、速水は話をどんどん進めていく。

「だから、俺はそんな下らない事には付き合いたく……」

「じゃあ、それで決まりですね?」

「おい、いい加減にしろよ!」

 俺は頭にきて、とうとう速水を怒鳴ってしまった。速水が悪いと思うけども。

 速水と俺は、しばらくにらみ合った。いくらなんでも、速水はバカげた”提案”とやらを取り下げるだろうと思ったのだが、

「へえー、三浦君は最初から負けを認めるんですか? じゃあ、丸坊主になってもらえますか?」

 と言った。速水って、こんなキャラだったのか? 普通に真面目な奴だと思ってたんだけどなあ……

「ねえ、速水君」

 俺が怒りを通り越し呆れていたら、すぐ横から声がした。上原だ。

「上原さん、何でしょうか?」

 速水が俺から上原に視線を移し、ばかっ丁寧な調子で問えば、

「その”ゲーム”の相手なんだけど、立候補してもいいかな?」

 と上原は言い、右手を小さく挙げて目をパチパチさせていた。