湯舟に肩まで浸かり、さっきの、ふゆみさんを抱きしめた時の感触を思い出す。そして、ふゆみさんの体もこの同じ湯に浸かったと思うと、身をよじりたい衝動にかられた。

 ふと見ると、湯舟にあるものが浮かんでおり、指で摘んでじっと見る。それは正に、ふゆみさんがこの湯に浸かった証しだった。

 今日の記念に取っておくかな。なんて、俺は変態か!?

 手早く体を洗って風呂場を出て、白いバスタオルで頭をゴシゴシ擦りながら居間へ行く。上は裸。下はパンツの上に白のスウェットを履いている。

 ふゆみさんが驚くといけないから、上もTシャツを着ようかと思ったが、汗が引く前にそれをするのは嫌で、本当は下も同じなのだが、さすがにそれはマズイだろうと思ったのだ。

 居間にふゆみさんはいなかった。俺は居間の明かりを消し、寝室に向かいかけて喉が渇いている事に気づいた。冷蔵庫から口を開けていないスポーツドリンクのペットを出し、それを持って、いよいよ寝室へ……

 寝室は常夜灯になっており、薄暗いが、ベッドの白い羽毛布団が、縦に盛り上がっているのはすぐにわかった。そしてその先に目をやれば、布団を肩のあたりまで掛けた、向うむきのふゆみさんの、夜目にも艶やかな黒髪が見えた。

「お待たせ」

「…………」

 声をかけたが、ふゆみさんの返事がない。もしかして……

 そっとベッドに近づき、枕近くに手を突き、ふゆみさんの顔を覗き込むと……やっぱりかあ。

 ふゆみさんは目を閉じ、眠っていた。

ハアー

 手順を誤ったのかな。つまり、俺が先に風呂に入るなりシャワーを浴びるなりし、その後ふゆみさんに風呂に入ってもらえば良かったのかもしれない。

 俺はベッドにゆっくりと腰掛け、ペットのキャップをプシュッとひねった。そして、スポーツドリンクを飲むべく口に運びかけた時、

「うわっ」

 不意に肩に重みを感じると同時に、持っていたペットを何者かに奪われてしまった。