俺は急いでベッドのシーツを替え、収納から枕を出した。前に付き合っていた彼女が使った枕だが、仕方ないと思う。

 そして居間に戻り、ソファに座ってテレビを見たが、何も頭に入って来なかった。しばらくして、

「お待たせ……」

 と言う声がして、振り向くと、薄いピンクのネグリジェを着た、女の子が立っていた。

 その女の子は、もちろんふゆみさんなのだが、一瞬別人に見えてしまった。なぜなら、いつも掛けている黒縁の眼鏡を外していたからだ。

 かなり雰囲気が変わったふゆみさんだが、俺が大好きなふゆみさんには変わりなく、はにかんだようなその表情に、俺はドキドキが止まらなかった。

「三浦君も入って?」

「え?」

「お風呂」

「あ……そ、そうだね」

 俺はふゆみさんを見つめたまま立ち上がり、ふゆみさんの横を通り過ぎかけたが、突発的に彼女を抱きしめてしまった。

 ふゆみさんは、「きゃっ」と可愛い悲鳴を上げたが、抵抗はしなかった。

「俺、ずっと前から、こうしたかったんだ」

「三浦君……」

 ふゆみさんのネグリジェは生地が薄いから、その隔たりを殆ど感じない。思ったより膨よかで、柔らかくて、温かい彼女の温もりと、甘いソープやリンスの香りを胸に吸い込み、それこそ気が遠くなりそうだった。

「待ってるから、お風呂に……」

「うん」

 とても名残惜しかったが、俺はふゆみさんの体を放し、風呂場へ向かった。