「狭いし、散らかってますよ?」

「平気」

 俺は財布から鍵を取り出しながら、何か変だなと思った。何が変かと考えたら……

 ふゆみさんの雰囲気が変わっているのだ。と言うより、戻っていると言うべきか。いつものふゆみさんに。それと、ちょっと緊張しているような気がする。

 ドアを開き、パチンと明かりを点けてふゆみさんに入ってもらった。この部屋に女性、というか人を入れるのは、何年ぶりだろうか。

 高速で部屋の中を見渡したが、特に見られてマズイものはなさそうだ。

「散らかってないじゃない」

 ふゆみさんは、ヒールを脱いで部屋に上がると、すぐにそう言った。

「そうですかね?」

 そう。社交辞令と思って"散らかっている"とふゆみさんには言ったが、実は結構綺麗好きな方で、掃除や洗濯は欠かさずやっている。潔癖症ではないけれど。

「あの、横になりますか?」

 と俺は聞いてみた。ふゆみさんはベロベロに酔っていたから、部屋に入ったら速攻でベッドに寝かそうと思ってたから。しかし……

「ううん、大丈夫」

 ですよねー。

 ふゆみさんの酔いは、すっかり覚めたようだ。酔いって、そんなに早く覚めるものだっけか?

「ねえ?」

「はい?」

「さっきから、どうして敬語なの?」

「あ……」

 言われてみれば、確かにそうだ。おそらく、ふゆみさんが彼氏持ちだと気づいた時からだと思う。

「ダメですか?」

「ダメ。って言うか、イヤ」

「分かりました、じゃなかった、わかった」

 ローテーブルからエアコンのリモコンを取り、スイッチを入れた。もちろん暖房だ。普段はテレビもつけるのだが、それはいいか。

 さてと、どうしようかなあ、と思っていたら、

「お風呂に入りたい」

 と、ふゆみさんは言った。