ど、どうしよう……

 はっきり言って、俺はふゆみさんと大人の関係になりたいと思っていた。ふゆみさんが彼氏持ちと知るまでは。

 だが、それを知ってしまった今は、それはマズイんじゃないかと思う。

 いや、待てよ。俺は考え過ぎではなかろうか。ふゆみさんは1人で家に帰る自信がなく、それで俺の所に泊まりたいと、言ってるのかもしれない。俺を信用して。

 よし。俺は我慢しよう。ふゆみさんの信頼に、応えるのだ!

「お願い……」

 ふゆみさんは甘えるようにそう言うと、俺にギューッと抱き着いた。コート越しながら、柔らかな胸を押し付けて。

「わ、分かりました。何もしませんので、安心してください」

 と言ったものの、本当に我慢出来るんだろうか……

 俺たちは地下鉄に乗り、運良く座れたが、ふゆみさんはずっと俺にしなだれ掛かっている。必然的に、俺は彼女の意外に華奢な肩を抱き寄せる格好になり、周囲の目が気になった。酔っ払いだらけだから、気にする必要はないのかもだが。

 地下鉄を降り、数分歩いて俺のアパートに着いた。2階に上がる階段を心配したが、意外な事に、ふゆみさんはしっかり自分の足で上がっていた。

 いくらか酔いが覚めたのかもしれない。としても、今さら帰してあげないけれども。