冷酒が来て、ちっちゃいグラスにそれを注ぎ、カチッと合わせて「乾杯!」と言った。何に乾杯かは知らないけど。

 ふゆみさんは、クイッと冷酒を美味しそうに飲んだ。

「やっぱり和食に日本酒は合うね? 三浦君も飲んで?」

「う、うん」

 俺はグラスを口に運びかけ、やっぱりやめてテーブルに置いた。

「ふゆみさん……」

「なあに?」

「えっと……彼氏は、いますか?」

「…………え?」

 ふゆみさんの、箸を持つ手が止まった。

「ふゆみさんって、彼氏持ちですか?」

「い、いないわよ。そんな人」

 あ、噛んだ。

「どうして、そんな事聞くの?」

「見た人がいるんです。同期会の前の日曜日に、ホテルのレストランで……」

「そ、それは……従兄弟よ。そう、従兄弟」

 また噛んだ。

「本当に?」

 ふゆみさんの目を見て聞いたら、

「本当よ」と言いながらも、目を反らされてしまった。

 俺は頭をガツンと、何かで殴られた気がした。

 一応否定はされたが、ふゆみさんには彼氏がいる、と思って間違いないと思う。

「そんな話はやめて、飲もう? ね?」

「う、うん」

 俺は冷酒のグラスを口に運び、グイッと一気に飲み干した。もう、こうなったらやけだ。やけ酒だ。酔ってやる!