気づけば、今日は金曜だった。今日もふゆみさんと会わずに帰ると、更に2日会えない事になる。当たり前だけれど。

 よし、決めた。今夜、ふゆみさんを誘おう。そして、思い切って彼氏の事を聞こう。ああ、ふゆみさんに会うのが楽しみだ。

 総務へ行くべく、勇んで席を立つと、そのふゆみさんが目の前に現れた。一瞬、幻かと思ったがそんな事はなく、彼女は真っ直ぐ俺に向かって歩いて来た。

「ふゆみさん、俺も今、そっちへ……」

 "行こうと思ったんだ"と続けるところで、周囲の異様な空気を感じた。みんな、驚いた顔で俺とふゆみさんを見ていたのだ。

 あ、そうか。俺がふゆみさんを名前で呼んだからか。失敗だったかも。

 ふゆみさんを見たら、顔を赤くして、微かな口の動きで「バカ」と言った。と思う。

 俺は「出ましょう」と言ってふゆみさんの腕を取り、それでなおさら周囲の注目を集めたようだが、まあ、いいや。

 ふゆみさんの腕を引き、俺たちは通路に出た。そして、ふゆみさんには壁を背にしてもらい、真っ直ぐに向き合った。

「三浦君が来てくれないから、来ちゃった」

 ふゆみさんは赤い顔のまま、そんな可愛い事を言い、潤んだ瞳で俺を見つめた。俺はまるで、心臓を鷲掴みされたような気がした。

 久々に、しかも至近距離で見るふゆみさんは、やっぱり魅惑的だ。綺麗だし、可愛いし、食べてしまいたい。今すぐに。

 俺は本当にこの人が好きなんだなと、この時、再認識したのだった。