12月も半ば。先月の同期会以降、ふゆみさんとは一度も飲みに行っていない。彼女と会って、"彼氏疑惑"について直接聞いてみたいと思う一方、その勇気が出なかったのだ。

 岡野は、ホテルでふゆみさんと一緒にいた男をふゆみさんの彼氏と断定していたが、そうと決まったわけではない、と俺は思う。

 たしか、男がふゆみさんをエスコートしていたから、と岡野は言っていたが、だからと言って彼氏とは限らないと思う。欧米のマナーはよく知らないが、ちよっとした知り合いとか、親戚とかでも、男は女をエスコートするのがマナーではないのか。そんな希望的観測が俺にはあった。

 しかし一方で、ふゆみさんが初めに言った言葉を思い出す。つまり、10月の同期会で速水がラブゲームを提案し、ふゆみさんを指名した時の事だ。たしかふゆみさんは、こう言ったと思う。

 "どうせ答えは見えてるから"と。

 俺はずっと、ふゆみさんは俺なんかには興味がなく、いくら口説かれても落ちるわけがない、という意味だと思っていた。みんなも同じだと思うが。

 しかし今は、違う意味だったのかなと思う。つまり、ふゆみさんには彼氏がいるから、他の男が言い寄っても無駄。そういう意味だったのかなと思うんだ。