「なんでよ?」

 岡野は、俺の答えに納得できないらしく、なおも追求は続いた。

「なんでって?」

「なんでゲームに徹しないのか、って事よ」

 なぜだったかな。ああ、そうだった。

「田所から言われたんだよ。相手を落とす最良の方法は、相手を好きになる事だ、ってさ」

 そんな言い方ではなかったかもだが、意味は合ってると思う。

「ちっ。田所のやつ、余計な事を……」

 岡野は小声で言ったが、俺には丸聞こえだった。岡野も相当な毒舌キャラだな。

 待てよ。もしかして、女ってみんなそうなのかな。ふゆみさんもその傾向があるし。腹の中じゃ毒舌だらけで、表面は猫かぶってたりか?

 女って、怖いなあ。

「で? 好きになったの?」

「ふゆみさんをか?」

「"ふゆみさん"!?」

 岡野と上原が同時に大声を出した。うるせえなあ。俺が彼女をどう呼ぼうが勝手だろ?

「どうなのよ?」

「え? ん……わからない」

 そう。それは俺自身、目下最大の謎のわけで……

「だったら、やめて」

「はい?」

「まだ間に合うみたいだから、桜井さんに本気になるのはやめて」

 俺は一瞬、呆気に取られてしまった。そんな事を言われるとは、思ってもみなかったから。

 岡野は本気で言ってるらしく、真剣な目で俺を見ており、隣の上原も、チョコパフェを食う手を止め、俺の顔を凝視している。

 そんな2人に、俺はフツフツと怒りを覚えた。そして、

「そんなの、俺の勝手だろ? 帰る!」

 と言い放ち、ガタンと音をさせて立ち上がったのだが……

「待って。まだ話があるの」

 と、岡野は言った。