「経験豊富なおまえでも、手強いか?」

「え?」

「だから、桜井ふゆみは手強いかって聞いてんだよ」

 いや、俺が疑問に思ったのはそっちじゃなくて……

「経験豊富って、何のことだ?」

 の部分なのだが、

「恋愛経験に決まってんだろ?」

 と、あっさり言われてしまった。

「ちょっと待て。そんな事はない。おまえは何か勘違いしてるぞ」

「そうかあ? まさか、女と付き合った事がないとか、言わないよな?」

「そりゃあ、あるよ」

「だよな? 何人ぐらいだ?」

「付き合った女性の数か?」

「ああ」

「えっと……」

 俺は上を向いて過去の記憶を手繰り寄せた。たしか最初は中3の時だったと思う。いや、中2か、ひょっとして中1だったかな。

 その後は……よく憶えてない。しょうがない、適当に答えるとするか。

「約10人だ」

 俺は田所を見て、そう答えた。

「大ざっぱだが、まあいいだろう。そんだけ経験があれば、一般的には経験豊富と言うと思うぞ」

「いやいや。田所、おまえおかしいって。付き合った女性の数と恋愛経験は関係ないだろ?」

 田所のやつ、何言ってんだろうか、と俺は思ってしまった。