田所の思考を邪魔しちゃ悪いと思い、少し待つと、田所は視線を上げ、ニッと笑った。

「なんだ、どうした?」

「俺、分かっちゃったかも」

「何が分かったんだ?」

 俺はドヤ顔の田所に向かい、身を乗り出した。田所が何を考え、何が分かったのかはさっぱりだが、頭が切れる田所の事だから、きっとすごい事なんだと思う。ところが……

「言わない」

「はあ? なんだよ、それ……」

「当たりとは限らないし、言ったらつまらなくなる」

「あの2人の事か?」

「聞くな。絶対に言わないし」

「なんだよ、もったいつけやがって……」

 田所の考えを聞き出したいが、それは諦めるほかないと思った。田所には、頑固なところがあるから。

「それよりもだ、おまえは俺に話があるんだろ? っていうか、相談ごとか?」

「実はそうなんだ。俺さ……桜井さんをどうやって落とすか、まったく分からないんだ」

 俺は姿勢を戻し、素直にそう言ってみた。そして田所の顔色をうかがうと、田所は不思議そうな顔をした。