珀斗の添臥であった、零落した宮家の姫君。
「添うて一年ほどでしょうか、胸を病まれてあっけなく儚い身となられました」
淡々とした口ぶりだ。
「病みやつれた身で、初めてわたしに手をついて願い事をされたのです。
後に残される者たちのことを頼む、と———」
誇りを失わず散った撫子の花びらは、まだ枯れることなくこの人の心に積もっているのだ。
その哀しみが、枢の眼に映ったから。
「女々しいとお思いか?」
珀斗の問いに、黙って首を横にふる。
生あるものには、生あるものが必要だと人はいう。
けれど———亡くなった祖母の言葉は今も自分の心を温めてくれている。
亡くなったものが、生あるものを動かしてくれることもあるのだから。
「添うて一年ほどでしょうか、胸を病まれてあっけなく儚い身となられました」
淡々とした口ぶりだ。
「病みやつれた身で、初めてわたしに手をついて願い事をされたのです。
後に残される者たちのことを頼む、と———」
誇りを失わず散った撫子の花びらは、まだ枯れることなくこの人の心に積もっているのだ。
その哀しみが、枢の眼に映ったから。
「女々しいとお思いか?」
珀斗の問いに、黙って首を横にふる。
生あるものには、生あるものが必要だと人はいう。
けれど———亡くなった祖母の言葉は今も自分の心を温めてくれている。
亡くなったものが、生あるものを動かしてくれることもあるのだから。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)