珀斗の添臥であった、零落した宮家の姫君。


「添うて一年ほどでしょうか、胸を病まれてあっけなく儚い身となられました」
淡々とした口ぶりだ。

「病みやつれた身で、初めてわたしに手をついて願い事をされたのです。
後に残される者たちのことを頼む、と———」


誇りを失わず散った撫子の花びらは、まだ枯れることなくこの人の心に積もっているのだ。

その哀しみが、枢の眼に映ったから。


「女々しいとお思いか?」

珀斗の問いに、黙って首を横にふる。

生あるものには、生あるものが必要だと人はいう。
けれど———亡くなった祖母の言葉は今も自分の心を温めてくれている。

亡くなったものが、生あるものを動かしてくれることもあるのだから。