籠のなかの小鳥は

どのくらいそうしていただろうか。

砂利を踏むかすかな音に、はっとして顔を上げたのと、その音の主が声を発したのが同時だった。

「皇女———」

白い直衣をまとったそのひとが、こちらを見つめている。


「白の宮様・・・」
あわてて立ち上がる。

あれこれ面倒をかけて都への外出を許されて。ここへ来たことが知れてしまったら。

珀斗がゆっくり近づいてくる。いつも涼しげなその表情に、戸惑いの色を浮かべて。

「———なぜ、皇女がここへ?」
純粋な疑問の言葉だった。


「お許しください。詮索するつもりはありませんでした」


あぁ、と珀斗が思い至った様子でつぶやく。
「皇女には、視えるのですか」


「わたしがというより、わたしの番の枢がですが・・・
白の宮様のお心にある場所が、映ったことがありました」